令和5年度「税に関する高校生の作文」コンクールにおいて、立志舎高校 和田 開智さんが本所税務署長賞を受賞しました。

受賞した作文

外はどんな世界?

立志舎高等学校 3年 和田 開智

 その昔、世界は「土、水、空気、火」から成ると考えられた。いいや、彼らは本気だ。確かに現代においては「素粒子」という最小単位が一つの解答であろう。しかし四元素説と呼ばれるそれに、現代科学を超えて何か興味深さを感じはしないか。
 そして今、世界は「税」から成ると考えている。いいや、私は本気だ。
 ・・・・・さて、そんな冗談を言ってもいないと正気を保てない。私は今まで税がなにを成しているかなど考えたことがなかった。しかし外に一歩出れば道路も信号機も図書館も、税の構造物は必ずと言っていいほど視界に入ってくる。半ば強制的に税と向き合った私は、世界の根底を成すようなその存在の果てしなさにしばらく呆然としていた。
 ある長期休暇、私は自習場所を探していた。家では筆が進まないことを痛感している、もう時間を無駄にしたくない。そうしてたどり着いた先は、市の交流館であった。快適な椅子に大きな机、広い部屋に三十人に満たない定員。税は姿形を変えて、子どもたちにこんな夢のような環境を、無償で与えるのだ。
 こんな素敵な場所をタダで使えるなんて。まるで世界に祝福されているような、少なくとも何か温かさを感じた。道中には、安全に遠くまで移動できるように、道路や信号機がある。みんなが色んな本を読めるように、図書館がある。
 今まで家にいるばかりの私は気づかなかった。家族からだけではない、日本の大人たちからの無償の愛、つまり税の構造物は一度注意するといくつも見つかる。子どもたちの暮らしを、創造を支えている優しい側面を持った存在だった。こんなものを利用しない手はない、しかしまあ、私の歳はまもなく大人と呼ばれるほどになるのだ。
 職に就いたとき、税について改めて意識するだろう。自分に関わるお金が段違いに増え、そこには税が介在する。今まで以上に多くの税を払う立場だ。そうなれば税金が高いだとか、節約をしようだとか思い始めるのだろうか。ただ今はそれを論じる知識がない。わかる範囲で私のすべきは、そうだ、外に出ること。
 博物館や、何かの資料館に行ってみようか。緑豊かな公園も趣深い、日陰にベンチが欲しいな。水族館や動物園も、今だからこそ発見があるかもしれない。外の世界には私たちの創造を支える税の構造物が沢山ある。今はただひたすらに利用しようではないか、無償の愛を受けて。
 世界は「税」で出来ている。
 いつか私は、この世界を作るんだ。